本のまにまに

啓発本やエッセイをメインにインパクトのある本を紹介するブログです。

「食えなんだら食うな」 関 大徹   #1

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曹洞宗の僧侶 関大徹の生い立ちと禅の境地】

この本は13歳で仏門に帰依した曹洞宗の関大徹老師が75歳の時に執筆したエッセイです。老師が現代人へ向けて禅の精神を自身の半生を交えながら語っています。厳しい修行を経験した老師の言葉は普通に生活している人からするとインパクトがあります。でも読み終わると漠然とした将来への不安感が消えて心が軽くなりました。

 

 本書のポイント

「関大徹とは」

 本書の執筆時は曹洞宗の大教師で有名寺院の住職を歴任した重鎮です。彼のすごいところは仏教の教えを忠実に実践したことです。例えば
・生涯不犯(結婚もしないし性交渉もない)
・精進料理しか食べない
・酒、たばこもやらない
・托鉢で喜捨(おそなえもの)を貰えなければ食べない
・寄付を求められれば有り金全部を寄付
どうでしょう。一般人のイメージしたお坊さんとは正反対ではないですか。でも私は僧侶には関老師のような生活をしてほしいと思っています。だって常人にはできないことができるから僧侶は地域で一目置かれるわけです。きれいな奥さんを連れてレクサス乗り回してる坊主のいうことなんて信じられません。それってお金持ちの社長さんと同じだからです。そうした私のゆがんだ期待に応えてくれた関老師の言葉だから私はこの本を好きになったのだと思います。また彼が本当にそうした生活を実践しているのだと思わせる説得力がこの本にはありました。

「すべてが自責」

関老師の言葉の最後は「~させていただいた」です。私は感銘を受けました。
人は周りのせいにした考え方をするものです。だってその方が楽だから。会社でもエビデンスといって、いちいちだれの責任かを裏付けてから仕事を進めます。でも本来、自分の人生に起こることは全て自分の責任です。仕事の話で言うと自分がエビデンスを信じたから仕事を進めたのです。さらにさせていただくという謙譲の表現に相手への敬いがあります。

「本書のテーマは死」

「生・老・病・死」はお釈迦さまが説いた人間にさけられない苦しみのことです。
この本はとくに生と死について書かれています。生と死が表裏一体だからこそ、この本を読んでいる(生きている)と死が大きなテーマとなります。関老師が食うのに困ったとき、そして死に直面したときにどう考えたか、どうしたかが仏教の教えを反映しています。
・食うのに困ったとき→食わない。なんなら野良犬になって残飯あさる。そうしたら「食えなくても食える」だ!
胃がんの宣告をされたとき→死への恐怖でうろたえたり、発狂するならそれもよい。
と老師は考えます。お釈迦様のいう通り生老病死は避けられない。どう受け止めるかの問題なのです。恐れて嘆くのか、受け止める度量をつけるのかは個人の自由。関老師は禅を通して生老病死を受け入れることで自由になろうとしていたのだと思います。

トイレ掃除 大事

関老師はトイレ掃除が大事とも話しています。禅宗では作務(掃除などの日々の営み)をとても重視するので、トイレという日常で最も汚れやすいところがどれだけ綺麗であるかは寺の試金石となります。自身、住職になっても自分でトイレ掃除をいていたようです。なぜなら、トイレを隠れて掃除することは徳を積む修行に最適だからです。大事なのは隠れて掃除をすることです。トイレ掃除をしているところを誰かに見つかると、お礼を言われます(住職なら当然です)。しかしお礼を言われると心の中に「他の人がやりたがらないことをしてあげてるのだからお礼を言われて当然」という、思いが生まれてしまう。老師は隠れて掃除をすることでその傲慢を抑えているのです。またあるエピソードで他の寺に招かれた老師はその接遇に感心します。と同時にある思いが沸き上がります「こんなに接遇いいお寺のトイレ(東司)みてみたい」と。曰く、、どうしてもトイレの綺麗さが気になるとのことでした。そして行きたくもないのにトイレに向かいます。すると掃除が行き届いているだけではなく、小便器に青々とした杉の葉が敷かれていました。しぶきが人にかからないようにするためです。この気遣いに老師はいたく感心しました。

この本から得た教訓

生まれた後に起こることは全て死に向かう通過儀礼なんだ。つまり人生の最後は死ぬだけ。苦しかろうが安らかだろうが、最後は死んでおしまいなんだ。それなら、死までの間で何をしてやろう。酒飲みまくってもいいし、狂ったように仕事をしてもいい。恋人に夢中になってもいい。でもどうせなら死ぬときに不安や後悔の塊で死にたくない。死も受け止めるためには結局、日々を自分の責任のもとまじめに生きていくしかない。あとトイレ掃除な。

書籍情報

タイトル:食えなんだら食うな 今こそ禅を生活に生かせ
著者:関 大徹
目次:
食えなんだら食うな
病なんて死ねば治る
無報酬ほど大きな儲けはない
ためにする禅なんて嘘だ
ガキは大いに叩いてやれ
社長は便所掃除せよ
自殺するなんて威張るな
家事嫌いの女など叩き出せ
若者に未来などあるものか
犬のように食え
地震ぐらいで驚くな
死ねなんだら死ぬな
解題―復刊に寄す―執行草舟